COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPDってどんな病気?
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応
基づく進行性の気流制限が発生する病気です。つまり、喫煙、大気汚染、職業上で吸入する粉塵(ホコリ)や化学物質(蒸気、刺激性物質や煙)、受動喫煙などにより肺が炎症を起こし、気道(空気の通り道)が狭くなる病気です。
喫煙に関しては、たとえ禁煙をしても気道の変化は不可逆性(元に戻らないこと)です。
さらに、喫煙量が増えると肺の気腫性病変(肺気腫)も増加し、COPDの病状に拍車を掛けます。喫煙されている方は早めの禁煙が必要です。
症状について
多くの場合は喫煙者で、労作時の呼吸困難と慢性の咳・痰が主な症状です。
口をすぼめて息を吐いたり(口すぼめ呼吸)、ビア樽状の胸郭と言われる胸の前後径の
増大などの出現は重症になるまで出現しないことが多い。
診断について
COPDの診断は、咳、痰、労作時の息切れなどの臨床症状がある場合や、喫煙歴など
COPD危険因子を有する中高年者であれば常に疑う必要があります。
(1) 呼吸機能検査
スパイログラムという検査器械を用いて検査を行ないます。
一秒率が70%以下の場合、COPDと診断いたします。ただし、他の疾患(肺癌や
肺炎などの炎症性肺疾患など)の場合もありますので、レントゲンやCTでも評価す
る必要があります。
また、一秒率が70%より多くても、肺活量の50%および25%での気流速度が低下している場合もCOPDの可能性があります。症状と合わせて診断いたします。
(2) 胸部レントゲン
他の疾患を除外するため、および比較的進行した肺気腫の病変や気道病変を診断
するために行ないます。
COPD(肺気腫が優位)の場合は、正面写真で①肺野の透過性口唇、②肺や末梢血管影の狭小化、③横隔膜の平坦化、④滴状心による心胸郭比の減少、⑤肋間腔(肋間の距離)開大などが特徴的です。
しかし、早期のCOPDを発見できることは出来ないので、胸部CT診断が必要です。
(3) 胸部CT
肺や全体の病変のランク付けを行ない、その合計で評価する方法が一般的です。
肺野を左右、上・中・下の計6つのエリアに分けて、それぞれについて肺気腫の広がりの程度で5段階に分け0~4点で点数を付けます。計24点満点で評価します。
当院ではコンピューターで解析いたしますので、客観的に評価が可能です。
(4) 呼気一酸化窒素(NO)測定検査
COPDに喘息(ぜんそく)が合併するケースがあります。喘息合併の場合は通常のCOPDと治療
が異なりますので、呼吸機能検査と合わせて検査する必要があります。
治療について
COPD患者において肺・気道の炎症や、それに伴う閉塞障害(気道において空気の流れが悪いこと)が進行することを抑える有効な薬剤は現時点ではありません。したがって、原因の多くを占めるタバコに対して喫煙防止と禁煙を行う必要があります。
しかし、以下に挙げる薬剤は症状を軽くしたり増悪を予防できるため、積極的な治療が必要です。労作時の息切れや咳などを改善できるので生活の質(QOL)の改善が可能です。
COPDと診断されても決して諦めることなく治療を受け、今後の人生を有意義に過ごしてください。
(1) 気管支拡張薬
薬物治療の中心的な役割を示すのが気管支拡張薬です。症状を軽減し生活の質(QOL)を改善します。
(2) 抗コリン剤
気管支喘息の気道収縮は炎症細胞由来のケミカルメディエーターが関与しますが、COPDの場合は迷走神経(自律神経)由来のアセチルコリンが主な原因です。そのアセチルコリンをブロックし気道の収縮を抑える薬剤です。気道に直接作用させるため吸入する薬剤です。
常用量の使用であれば全身的な副作用はほとんどありませんが、前立腺肥大を有する人は尿閉(尿がでない)を来したり、緑内障を悪化させることが報告されています。使用前に問診し確認します。
(3) β2刺激薬
気道のβ受容体を刺激して気道を拡張させます。抗コリン剤と同様に吸入する薬剤です。
副作用としては頻脈や手指の震えなどが有りますが、常用量では問題ありません。
(4) グルココルチコイド(ステロイドホルモン)
経口でステロイドホルモンを長期間にわたってCOPD患者に使用することは、ステロイドミオパチー(筋力の低下、とくに呼吸筋)から呼吸不全を悪化させるため好ましくありません。
吸入ステロイドはCOPDの進行を止めることは出来ませんが、症状増悪回数の多い症例では、増悪回数を減らし、QOL(生活の質)の悪化速度を減らすと言われています。しかし、十分なデータはまだないため、状況を見ながらの使用となります。
(5) その他
喀痰の多いCOPD患者は経年的な1秒量の低下(肺機能の低下)が大きいと考えられており、喀痰のケアが重要です。そのため去痰剤を併用します。